パラグライダー国内最長飛行距離記録更新 179.8km

2020年4月8日、またしてもnasa足尾山フライトエリアで距離飛行の記録が更新されました。
パイロットの中川喜昭さんは、5年前の2015年4月にも最長距離記録を出しており、ご自身での記録更新です。
以下、ご本人のレポートを掲載します。


クロスカントリーフライトの報告
2020年4月8日
中川喜昭

私はこの度、自身が持つ国内最長距離記録を更新することができました。これまでの距離記録は2015年4月の168.6km(JHFクロスカントリーリーグ)です。今回、自分自身で記録更新が成りました。とても嬉しく思います。

2020年シーズンもチャレンジは続けていましたが50km程度が最高で、今ひとつ距離を伸ばせないでいました。4月7日のフライトでも早々に降りて、NASAショップまで戻ると板垣校長から、「明日は良い。ハングの人達は記録を狙って大勢飛ぶぞ、私は回収車を走らせる」。とのこと。もちろん飛ぶつもりではいたけれども、そんなに良いとは思っていなかった。帰宅してから気象情報を見ると、雲底1800mくらいで南風が福島県北部まで届く。まあまあではあるが、全体に不安定で福島県は午後局地的な雨の予報が出ていた。予想天気図では本州付近は弱い気圧の谷に入っていて、小さな低気圧がいくつも描かれている。

8日朝、自宅を出るとき既に積雲が見えて、いかにも活発そうではある。エマグラムは良い感じ。雲底は始め1500mくらいで、気温が順調に上がれば2000m以上になりそう。風は上空まで南。福島県で雨に降られても100kmくらいは行けるかもしれないと期待しつつ11時過ぎに離陸。12時頃出発のつもりで待機していたら対地150mくらいまで下がってしまった。リフライトを覚悟したが、なんとか上げ直せた。これが本日最大のピンチだった。

そんなことをしているうちに12時を過ぎて、燕山1600mから12時20分頃に出発。クラウドストリートが形成されていて順調に北上する。雲底は足尾1600m、茂木~烏山1800m、黒羽2000m、白河で2400mに達した。積雲は活発で進路方向に積乱雲になりそうなものも見える。

午後2時30分頃に白河。かなり速いペースでここまで来られた。いよいよ本番、しかし白河からのクラウドストリートは福島空港方向に続いていて使えない。須賀川西側に独立した積雲があるので目標にする。低くなるものの弱いリフトを見つけてしがみついているうちに、郡山付近で発達している積雲に届いて再び2400m。福島市が見えてきたが、雲に覆われていて雲底も低い。二本松を過ぎた頃に福島市北部で雨が降っているのが判った。午後4時に福島市に到達。福島市北部から伊達市にかけて東西に降水域が見える。弱いリフトで時間を稼ぎながら雨雲の動きを観察すると、どうやら降水は弱まりながら東方向に移動している模様。前方には前回5年前に着陸したところが見えて、記録更新を確信した。

スピードを抑えながら北上して東北道福島JCT上空にさしかかった頃、降水は見えなくなった。一面雲に覆われている状況で高度1000m程度、米沢市に至る山越えは無理そうなので、福島盆地の縁をたどって東進。阿武隈川の流れる平地を目差すが、風が北東に変わった。これまで乗ってきた南風と、この北東の風がぶつかって雨雲が発達していたのだろうか。対地速度が一気に落ちて高度も下がっていく。最後は対地速度が一桁まで下がって、そのまま着陸。NASA PGメインからの飛行距離は約176km、JHF XCリーグ距離計測で179.8km。自己記録更新。国内記録更新。とても嬉しい。
平日ということもあり、足尾を出発してから最後まで単独飛行でした。しかし先行しているハンググライダーの方々、また地上からは回収車を走らせているNASAスタッフの佐藤さんが要所で情報を流してくれて、とても助かりました。ありがとうございました。日頃からトレーニングの場を整えていただいているNASA様にも、この場を借りてお礼申し上げます。

次の目標は日本国内200kmです。