タンデムクロスカントリーフライト国内記録更新

3月29日は移動性の高気圧が関東の南に張り出し上空の寒気もある200km越えが狙える予報に平日にも関わらず多くのパイロットが記録更新をもくろみNASAに集まった。

パラグライダー・タンデムによるクロスカントリーフライト国内記録は2004年に文字さんの33.2kmがある。
今回はこの記録を破る為に一週間前から計画を立てて2倍以上の距離を目標に挑んだ。

気温減率は良く予想の雲低高度は2000m!ちょっと上がり過ぎだ。クロカンフライトの理想は狙う距離によって異なるが60~100kmを飛ぶなら上がり過ぎは禁物だ。
なぜなら関東平野の西側の日光や那須の山よりも高く上がれば上空の西風が強く吹くことになるからだ。
面積が大きくアスペクトの低いタンデム機は沈下が少なくテールウインドには強いがサイドやヘッドウインドに極端に弱くなる。
クロカンの鉄則であるキープハイと雲の狙える良い条件のレグは常に西に向ける作戦で12時27分テイクオフ。
すでにテイクオフは南が入り始め北側の尾根に沿ってしばらくサーマルを探るとアベレージで+5m/sのサーマルに雲まで数分で上がっていく。
サーマルは強く少し荒れたコンディションだが「これなら記録更新は行ける!」と確信して北上を開始する。
タンデム機は安定性が強い分、コントロールは重くレスポンスも悪い。ブレーク操作は最新のタンデム機でも決して軽くはない。
一緒に北上を開始したのは現国内記録保持者の中川さんと女子記録の中目さん、NASAスタッフの名人とNASA会員の吉田さん。
一緒にサーマルを探せる仲間がいることはクロカンフライトの強力なアドバンテージとなる。
足尾から加波山、ここから第一関門の平地を渡るコースは西風に逆らわず仏頂に向けて進み、途中の弱いリフトも逃さず拾いながら慎重にグライドする。
前半は1000mを切らずに+4~6 m/sを乗り継ぎ順調だ。
雲低2000mの仏頂からは西にコースをとって、狙うは真ん中の尾根先の「希望が丘カントリー」のサーマル、しかし雲はあるもののノーヒットで通称「希望の無い丘」の洗礼を受けるが次の東の宮カントリーで500を切ってサーマルヒットする。
ここで上げれば記録更新が見えてくる、強く荒れていて更に低い事もあって掴み難いサーマルを見失わない様に確実に回して1900m、一息ついて北上を再開する。
このまま烏山エリアまでなら滑空比で届く、記録更新だ!しかし12年前の記録を数km抜いてもカッコ悪いし、もう一上げして目標通りに黒羽の60kmは越えよう!気合お入れなおして600mから吉田さんと一緒に上げ返す。
タンデムは重いブレークとレスポンスに苦労はするが楽しく会話をしながら飛べるのが最大の魅力だろう。
パッセンジャーのK、H(匿名希望)さんはパラP証所持者だがクロカンは初めて、雲の見方や使い方、地表の見方、風の流れ、コンバージェンスラインの読み方、コース取り等を説明しながら最高の実践クロカンセミナーが楽しくできた。

記録を更新した烏山からは積雲はなくなり高層雲がかかりはじめて日照が弱まり当然の様にサーマルも弱くサーマルトップも下がる厳しい条件になる。
我慢の飛びを続きて黒羽を越えるがハーネスのセッティングの問題やブレーク操作の重さで気力が続かず、安全なランディングも考えて伊王野の広い田んぼ、72.9kmにランディング、3時間10分の空の旅は終わった。

この日、一緒に飛んでいた中目さんは90km、吉田さん・95km、名人は120km飛んでいる。
「もうちょっと行けた!」という思いもあるが12年ぶりのタンデム記録更新には丁度いい距離と満足のフライトだ。

ハーネスのセッティングとフットバーの設置、タンデムライザーの変更(今回はバータイプ)等の対策をしっかりとおこなえば疲れ方が軽減するので更に長時間のフライトが可能になるだろう。
次回は100kmオーバーの記録を狙います。

※タンデムフライトのクロカンは一人よりも楽しさも倍増しますがリスクも増えるので挑戦する場合はしっかりとした準備が必要です。

板垣直樹
2016年3月